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創立時から変わらない想い。
新規事業の立ち上げから、
そして現代に至るまで。

フランスベッド株式会社 

代表取締役社長 池田茂 インタビュー

―― 今年で設立68年目となるフランスベッドですが、
まずはその成り立ちと歴史を教えてください。

代表取締役社長 池田茂(以下「池田」):フランスベッドの始まりは、1949年にさかのぼります。弊社の前身は、東京都三鷹市で誕生した「双葉製作所」という会社です。自動車製品のシート作りを中心に売り上げを伸ばしていましたが、1956年に日本初となる分割式ベッド「フランスベッド」を発売したところ、それが日本で大ヒット。その成功にあやかって、社名もフランスベッドに変更しました。1963年には、医療機器のレンタルサービスを行う「フランスベッドメディカルサービス株式会社(以下、メディカルサービス)」が誕生。その後2009年、フランスベッドとメディカルサービスが合併し、今日へと至ります。

フランスベッドの創立者は父の池田実ですが、メディカルサービスを設立したのは私です。きっかけとなったのは、医療用ベッドを購入後、わずか3ヶ月で不要になったお客さまからの「ベッドを下取りしてくれませんか」という言葉。「医療用ベッドを必要な期間だけレンタルする」というサービスを始めましたが、どのような反応が返ってくるかは誰にも分かりませんでした。
最初に手応えを感じたのは、同サービスの開始から2~3ヶ月経過したころ。ウキウキした様子の社員が、「お客さまが喜んでいます」と報告してきました。「どうして喜んでいると分かるんだ」と尋ねると、「納品時に、みんなチップをくれるんです」と答えます。それならばと立ち上げたのが、メディカルサービスというわけです。

しかし業績は思うように伸びず、赤字続き。12年目からは黒字に転じ、それ以降は順調でした。2000年には介護保険制度の制定をきっかけにさらに収益を伸ばし、その後は業績の悪化したフランスベッドと合併。
2016年度の決算書を見ると、新生フランスベッドの売り上げ55%、収益85%は、メディカルサービス部門の功績です。社名こそ同じでも、68年前と今では中身の違う会社なんですよ。

1956年に発売された日本初の分割式ベッド
2016年時点で、収益の多くを占めるメディカルサービス部門

―― 赤字続きだったというメディカルサービスですが、
黒字になったきっかけはありますか。

池田:前述の通り、レンタルサービスを始めた当初、こういった事業は珍しく、なにもかもが未知数でした。在宅看護・訪問看護の概念もなく、寝たきりになったお年寄りは介護施設に入所させるのが当たり前。同サービスを普及するには、まずこれらの看護方法を知ってもらう必要があると考えました。そこで思いついたのが、在宅看護・訪問看護を啓蒙する小冊子を作り、保健所で配布する方法です。保健師さんにもお願いし、訪問先の家庭にも配ってもらいました。

最初に手応えがあったのは、東京都の府中市でしょうか。当時の府中市では、介護用ベッドや車椅子などの医療機器を、必要な人に無償で提供していました。それをレンタルに切り替えることで、コスト削減に踏み切りたいと言うのです。府中市の例を皮切りに、民間会社と地方自治体が一緒になって医療機器をレンタルする事業が全国に広がりました。その後は介護保険制度の一部にも認定され、収益が上がると同時に競争相手も一気に増えましたね。

生きがいは、お客さまの喜ぶ顔。
世界一の長寿国が提案する、次なる事業のかたち

―― フランスベッドの経営理念を教えてください。

池田:私たちの基本的な考えは、「奉仕の精神でやるんじゃない」ということです。だって、私たちがいくら「奉仕の精神」と言ったところで、相手がどう取るかは分からないのですから。 特に35年前は、民間会社がこのような事業を行うことに激しい拒否反応を示す人が少なくありませんでした。講演会では、「老人を食い物にする事業」なんてなじられたこともあります。その際に反論したのが、「奉仕の精神でやるんじゃない。お客さまが喜ぶことに生きがいを感じてやっているんだ」という言葉です。

人の欲望には底がないので、私たちがどれほど手を尽くそうと、相手を本当に満足させることはできません。だからこそ、私たちはお客さまを“満足させる”のではなく、“喜ばせたい”と考えています。レンタルサービスにしても、元々ある商品に対して、“貸す”というサービスを入れたからこそ、喜んでもらえたのでしょう。

同事業を始めた頃は、毎日のように会社に感謝の手紙が届いていました。でも業績はいつも赤字。「手紙はいらないよ、金が欲しいよ」なんて、冗談を言って笑っていました

「毎日のように感謝の手紙が届くのに、業績はいつも赤字でした」
三重工場で組み立てられる電動ベッドフレーム

―― 今後の事業展望を教えてください。

池田:現在、メディカルサービス部門のメインターゲットは介護保険制度の対象者です。でも、介護保険制度に頼り切った事業は、実はかなり危険なんです。介護保険制度の内容なんて、行政次第ですぐに変わるものですから。

そこで思いついたのが、75歳以上の“元気”なお年寄りを対象にしたブランド「リハテック」です。でも、一口に“元気”と言っても、本当に元気なお年寄りなんていないんですよ。要介護者とまではいかずとも、歳を取るとみんな、なにがしかの病気や障害に悩まされるものです。リハテックでは、そんな人たちをサポートするための商品開発を行っています。

なかでも力を入れているのが、リハテック商品の展示販売を行う「リハテックショップ」の運営です。というのも、こういったショップは世界中でもかなり珍しいんです。なんせ、日本は高齢化の最先端を走る国。世界中どこを探したって、似たような事例はありません。商品にしろ、販売にしろ、マネする相手がいないので、なにもかも自分で考える必要があります。
幸運だったのは、日本が世界でもトップクラスの技術力を持っていること。だからこそ、こういった事業は日本の会社が先陣を切ってやるべきだと思っています。

全国に展開するリハテックショップ
誰でも安心して乗れる電動アシスト三輪自転車

売れない商品には、なにがしかの理由がある。
自らの頭で考えながら、次の一手を探っていく

―― 商品を作ったり展開したりする上で、
特に難しいと感じることはありますか。

池田:いくら良い商品を開発したところで、全部がヒットするとは限らないことでしょうか。かといって、売れない商品を放置するわけにもいきません。長年考えた結果、商品が売れない原因は主に2つあると考えています。

1つ目の原因は、ブランドや商品の知名度が不充分であること。
リハテックショップの1号店を作った際も、メインターゲットの「元気なお年寄り」にアピールする方法がなく、かなり頭を悩ませました。ターゲット範囲が狭すぎるため、テレビCMなどで大きく宣伝をしても、宣伝費を回収できる見込みがなかったんです。お年寄りはパソコンやスマホも使わないし、物欲がないので新聞の折り込みチラシも見ない。
そこで思い付いたのが、彼らに向けたムック本を作ること。これをクリニックや調剤薬局に設置してもらい、待ち時間に読んでもらおうと考えたのです。まぁ今のところ「字が小さい」という反応しかないんですが。これからですね。

2つ目の原因は、その商品になにがしかの問題があること。
例えば、2015年に発売した「おでかけキャッチ」という商品。現在日本では、年間約2万人のお年寄りが行方不明になっています。認知症などの理由で、外出したきり帰れなくなってしまうんですね。不幸な事故を防ぐため、認知症の方にはペンダントタイプのセンサーを付けるのが一般的でした。玄関先に専用のブザーを設置することで、彼らが玄関に立つと家主に連絡がいくという仕組みです。しかし、認知症の方はセンサーを嫌がり、自分で外してしまうと言います。
そこで作ったのが、「家人がセンサーを持つ」という逆転の発想の商品。いままでのブザーはセンサーを持つ人に反応していたのですが、今度のブザーはセンサーを持たない人に反応します。

自信満々の商品でしたが、これが案外鳴かず飛ばずで。「どうして売れないんだ」と、毎日のように考えていました。
そんな時、高田馬場のリハテックショップで、「最近のお年寄りは、和室で座椅子を使うんですよ」と耳にして、目からうろこが落ちました。だって和室なんて、最近のマンションにはないですよ。高層ビルばかりの新宿区でも、お年寄りは一軒家に住んでいるんです。

そうすると、さっきのセンサーが売れない理由も見えてきました。要するに、一軒家は出入り口が多いんです。玄関や、台所の勝手口はもちろん、縁側に出る大きな窓など、4~5カ所は外に出られる場所がある。そんなところ全部にセンサーは設置できません。
そこで、一軒家で在宅介護をする方にどうしているか聞いたら、「内側からは開かない鍵を付けている」と言うのです。その鍵はホームセンターで購入できるそうですが、それを探すのも一苦労ですよね。

なので、次の会議では「今度は鍵も一緒に売ろう」と提案しました。その取り付けも社員がやれば、お客さまも楽になるはず。このサービスは、今後取り入れていく予定です。

「どうして売れないんだ、と毎日のように考えてました」
クリニックや調剤薬局に流通しているムック本

どんなときでも、お客さまに喜んでもらうために。
目指すのは、世のため、人のためになる会社

―― フランスベッドを支える社員に、メッセージなどはありますか。

池田:あえて言うことがあるならば、「どういったことをすれば、お客さまが喜んでくれるかを考えなさい」でしょうか。そんなことを毎日のように考えていると、面白いアイデアも自然と浮かぶようになります。

たとえば、2016年にスタートした「ベッドを移動させるサービス」。このサービスを思い付いたのは、自分の部屋の模様替えがきっかけです。さてベッドの位置を変えるかと思ったとき、ベッドがあまりにも重くて、動かせないと気が付いたんです。「同じようなことで困っている人が他にいるかもしれない」と考え、このサービスの発足へ至りました。ただ、そこで採算を合わせるのが難しいんです。それは社員に考えてもらわないと。

もちろん、社員からの面白いアイデアも随時募集中です。でも実際のところ、本当におもしろいアイデアなんて、会議などのお堅い場では出ないですよ。それこそ、お酒を飲んで談笑しているようなときじゃないと。ただ残念なことに、私が社員と気軽に話せる機会って、実はほとんどないんです。朝礼なんかで喋るのも嫌いだし、口が悪いからと新卒採用の面接にも同席させてもらえない。良くも悪くも正直なので、「君のスキルならあっちの会社が向いているんじゃないか」なんてアドバイスしてしまうんです。

新宿の本社の風景と働くスタッフたち
1,300名の従業員が全国各地で日々働いている

―― 最後に、お客さまへのメッセージや、今後の展望をお聞かせください。

池田:世の中にはさまざまな会社がありますが、私たちが目指すのは、「世のため、人のため」の会社です。
そして、矛盾しているようですが、本当に「世のため、人のため」を思うなら、ただ高品質な商品を作り続けるだけではいけません。あまりに品質が良すぎる商品は、ある意味では考えものなんですよ。
たとえば、お年寄り相手に「うちのベッドは値段こそ高いけど、寝心地もよく長持ちします」と言ったところで、「もう人生長くないから」なんて、袖にされてしまうんです。「腰痛もひどいし、これ以上長生きしたくない」なんてね。

この仕事をして分かったのは、世の中には、病気や障害を楽にしてくれる商品を必要とする人が案外多いということです。腰痛などの慢性的な痛みはもちろん、睡眠時無呼吸症や逆流性食道炎など、睡眠に関わる悩みを持つ人は尽きません。 私たちは、ベッド会社のやり方でみなさまの悩みに寄り添いながら、よりよい世の中を作るお手伝いをしたいと考えています。

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