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「福祉用具レンタルサービス」
始まりの物語

フランスベッド株式会社 

代表取締役社長 池田茂 インタビュー

―― フランスベッドの成り立ちと歴史を教えてください。

代表取締役社長 池田茂(以下「池田」):フランスベッドの始まりは、1949年にさかのぼります。弊社の前身は、東京都三鷹市で誕生した「双葉製作所」という会社です。自動車製品のシート作りを中心に売り上げを伸ばしていましたが、1956年に日本初となる分割式ベッド「フランスベッド」を発売したところ、それが日本で大ヒット。その成功にあやかって、社名もフランスベッドに変更しました。1963年には、医療機器のレンタルサービスを行う「フランスベッドメディカルサービス株式会社(以下、メディカルサービス)」が誕生。その後2009年、フランスベッドとメディカルサービスが合併し、今日へと至ります。

フランスベッドの創立者は父の池田実ですが、メディカルサービスを設立したのは私です。きっかけとなったのは、医療用ベッドを購入後、わずか3ヶ月で不要になったお客さまからの「ベッドを下取りしてくれませんか」という言葉。「医療用ベッドを必要な期間だけレンタルする」というサービスを始めましたが、どのような反応が返ってくるかは誰にも分かりませんでした。
最初に手応えを感じたのは、同サービスの開始から2~3ヶ月経過したころ。ウキウキした様子の社員が、「お客さまが喜んでいます」と報告してきました。「どうして喜んでいると分かるんだ」と尋ねると、「納品時に、みんなチップをくれるんです」と答えます。それならばと立ち上げたのが、メディカルサービスというわけです。

しかし業績は思うように伸びず、赤字続き。12年目からは黒字に転じ、それ以降は順調でした。2000年には介護保険制度の制定をきっかけにさらに収益を伸ばし、その後は業績の悪化したフランスベッドと合併。
2022年度の決算書を見ると、フランスベッドの売り上げはメディカル事業が64.9%、インテリア事業が34%です。(フランスベッドホールディングス連結決算資料より)
社名こそ同じでも、創業当時と今では中身の違う会社なんですよ。

1956年に発売された日本初の分割式ベッド
2016年時点で、収益の多くを占めるメディカルサービス部門

―― 赤字続きだったというメディカルサービスですが、
黒字になったきっかけはありますか。

池田:前述の通り、レンタルサービスを始めた当初、こういった事業は珍しく、なにもかもが未知数でした。在宅看護・訪問看護の概念もなく、寝たきりになったお年寄りは介護施設に入所させるのが当たり前。同サービスを普及するには、まずこれらの看護方法を知ってもらう必要があると考えました。そこで思いついたのが、在宅看護・訪問看護を啓蒙する小冊子を作り、保健所で配布する方法です。保健師さんにもお願いし、訪問先の家庭にも配ってもらいました。

最初に手応えがあったのは、東京都の府中市でしょうか。当時の府中市では、介護用ベッドや車椅子などの医療機器を、必要な人に無償で提供していました。それをレンタルに切り替えることで、コスト削減に踏み切りたいと言うのです。府中市の例を皮切りに、民間会社と地方自治体が一緒になって医療機器をレンタルする事業が全国に広がりました。その後は介護保険制度の一部にも認定され、収益が上がると同時に競争相手も一気に増えましたね。

生きがいは、お客さまの喜ぶ顔。
世界一の長寿国が提案する、次なる事業のかたち

―― フランスベッドの経営理念を教えてください。

池田:私たちの基本的な考えは、「奉仕の精神でやるんじゃない」ということです。だって、私たちがいくら「奉仕の精神」と言ったところで、相手がどう取るかは分からないのですから。 レンタル事業を始めた当初は、民間会社がこのような事業を行うことに激しい拒否反応を示す人が少なくありませんでした。講演会では、「老人を食い物にする事業」なんてなじられたこともあります。その際に反論したのが、「奉仕の精神でやるんじゃない。お客さまが喜ぶことに生きがいを感じてやっているんだ」という言葉です。

人の欲望には底がないので、私たちがどれほど手を尽くそうと、相手を本当に満足させることはできません。だからこそ、私たちはお客さまを“満足させる”のではなく、“喜ばせたい”と考えています。レンタルサービスにしても、元々ある商品に対して、“貸す”というサービスを入れたからこそ、喜んでもらえたのでしょう。

同事業を始めた頃は、毎日のように会社に感謝の手紙が届いていました。でも業績はいつも赤字。「手紙はいらないよ、金が欲しいよ」なんて、冗談を言って笑っていました

「毎日のように感謝の手紙が届くのに、業績はいつも赤字でした」
三重工場で組み立てられる電動ベッドフレーム

どんなときでも、お客さまに喜んでもらうために。
目指すのは、世のため、人のためになる会社

―― 最後に、お客さまへのメッセージや、今後の展望をお聞かせください。

池田:この仕事をして分かったのは、世の中には、病気や障害を楽にしてくれる商品を必要とする人が案外多いということです。腰痛などの慢性的な痛みはもちろん、睡眠時無呼吸症や逆流性食道炎など、睡眠に関わる悩みを持つ人は尽きません。 私たちは、ベッド会社のやり方でみなさまの悩みに寄り添いながら、よりよい世の中を作るお手伝いをしたいと考えています。

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